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東日本大震災から10年 ウィズコロナの今、学ぶ教訓と復興

2011年3月11日、東日本を未曽有の大災害が襲いました。東日本大震災です。

この日の出来事は、今も多くの人の記憶に鮮烈に残り、この日を境に私たちの防災意識や、地震・津波に関する考え方をはじめ、様々なものが変容したと言えます。

どれだけ時間が経っても、なかったことにはできない災害。一方で、懸命な復興が実を結び、震災前の姿を取り戻しつつある事例もあります。起きてしまった悲劇を教訓とし、災害は想定を超えて起きるものとして今後の備えに生かそうとする事例もあります。これらはまさに今、「ビフォアコロナ」に戻るのではなく「ウィズコロナ」の時代を見据える私たちがたどるべき道と重なるものがあります。

2021年、この10年の節目の年にあらためて東日本大震災を振り返り、コロナという新しい壁に立ち向かう私たちに与えてくれる教訓を探りたいと思います。

東日本大震災の概要

まずは、東日本大震災は具体的にどのような災害だったのか。東日本大震災の概要を、データから確認してみましょう。

東日本大震災のデータ
マグニチュード9.0
震度 最大震度7(宮城県栗原市)、宮城県・福島県・茨城県・栃木県などで震度6強
津波 福島県相馬 9.3m以上、岩手県宮古8.5m以上、大船渡8.0m以上、宮城県石巻市鮎川7.6m以上、宮城県女川漁港で14.8mの津波痕跡を確認
死者数 15,899名
行方不明者数 2,527名
※マグニチュード・震度・津波は内閣府より、死者数・行方不明者数は警察庁の令和2年12月10日付発表より抜粋
内閣府<特集 東日本大震災>
http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h23/63/special_01.html
警察庁<平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の警察活動と被害状況>
https://www.npa.go.jp/news/other/earthquake2011/pdf/higaijokyo.pdf

東日本大震災は、三陸沖の宮城県牡鹿半島の東南東130km付近で、深さ約24kmを震源とする地震でした。マグニチュードは、1952年のカムチャッカ地震と同じ9.0。これは、日本国内観測史上最大規模、アメリカ地質調査所(USGS)の情報によれば1900年以降、世界でも4番目の規模の地震でした。

国土交通省によると、建物被害について全壊した建物は全国で約13万棟とされています。内閣府の発表では住宅の再建費用は約2,500万円、家財の再購入費用等の生活再建費は、さらに50万円以上の費用がかかっています。

また、国土交通省の浸水区域を対象とした調査によると、約12万棟の建物が津波により全壊したとされており、いかに津波による被害が甚大だったかがわかります。

東日本大震災で被災した住宅の再建費用と、受給できた公的支援などについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。↓

東日本大震災の教訓

内閣府の防災情報のページでは、東日本大震災の教訓について、以下の通りまとめています。

・災害対策に当たっては,被害が大きかった現象のみならず,それ以外に起きた現象から得られる教訓等にも着目する必要がある。

・災害を完璧に予想することはできなくても,災害への対応に想定外はあってはならない。このため,災害対策の検討に当たっては,楽観的な想定ではなく,悲観的な想定を行う必要がある。

・被害を最小化する「減災」を実現するためには,行政のみならず,地域,市民,企業といった多様な主体による,ハードやソフトの様々な対策を組み合わせる必要がある。

・発災直後には,十分な情報を得て対策を行うことはできない。このため,不十分な情報の下でも災害対策を行えるように,日頃からの備えや訓練が必要である。

・住民の避難や被災地方公共団体への支援等については,甚大な被害が広範囲にわたって発生することを想定のうえ,広域的な対応を有効に行うことができる制度とする必要がある。

・得られた教訓については,次の災害発生時に忘れられていないように,防災教育等を通じて後世へしっかりと引き継いでいく並々ならない努力を様々な場面で行う必要がある。

内閣府:内閣府防災情報のページ「平成24年版 防災白書」より抜粋
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h24/bousai2012/html/honbun/index.htm

これら東日本大震災の教訓を生かすため、様々な取り組みが行われています。ここでは、そのうち災害の想定の見直しに関する取り組みを簡単にご紹介します。

災害の想定の見直し

東日本大震災の経験・教訓を踏まえ、今後発生が懸念されている災害の想定が見直されています。

東日本大震災において、これまでの想定をはるかに超えた巨大な地震・津波が発生し甚大な人的・物的被害が生じたことから、内閣府の中央防災会議は「地震・津波対策専門調査会」を設置しました。この地震・津波対策専門調査会の提言により、南海トラフ地震・首都直下地震の被害想定についても見直しが行われています。

南海トラフ地震・首都直下地震については当サイトにおいてもすでにいくつかの記事で触れており、その対策の必要性についてもご紹介しています。詳しくは以下記事をご参照ください。

これらの災害について、東日本大震災発災以前は、南海トラフ地震は過去数百年に発生したものと同様の地震に備えること、首都直下地震は「東京湾北部地震」を中心とした地点の被害想定と対策を念頭に置かれていました。

しかし、東日本大震災を教訓とした地震・津波対策専門調査会の考え方を踏まえ、南海トラフ地震については過去の地震の再現にとどまらないあらゆる可能性を考慮した巨大地震モデルを構築し最大クラスの地震に備えることとし、首都直下地震についても想定規模を広げるとともに相模トラフ沿いで発生する規模の大きな地震も想定対象として備えることとしています。

いずれも東日本大震災の教訓を生かし、想定外を生まないための取り組みです。

東日本大震災からの復興

復興庁は、発災から10年が経過した今、被災地の復興状況や東北の魅力、震災の記憶や教訓などを情報発信するためのポータルサイト「あれから10年。東北の今と、未来」を開設。それら情報を写真や映像で発信しているほか、各地で開催されるイベント情報の集約やフォトコンテスト、オンラインシンポジウムの実施などを行っています。

復興庁<東日本大震災発災10年ポータルサイト>
https://www.reconstruction.go.jp/10year/

このポータルサイトで紹介されている東日本大震災からの復興の取り組みによると、発災直後は約47万人だった避難者数は約4万人に減少。避難者の方は避難所から仮設住宅、公営住宅への入居を経て、再建された自宅へと移行が進み、最大約12万4千戸だった仮設住宅等の入居戸数も約1千戸に減少しています。

また、地震・津波被災地域では、生活に密着したインフラの復旧はおおむね終了しており、住まいの再建についても、災害公営住宅や宅地の整備がおおむね完了。引き続き被災地の発展基盤となる復興道路・復興支援道路等の交通・物流網整備や復興のまちづくりを進めていくこととしています。

このポータルサイトでは、こういった情報掲載以外にも、福島の今を伝えるポータルサイトへのリンクや、岩手・宮城・福島の3県の復興や魅力を伝えるフォトコンテストを実施しており、その美しくもたくましい姿を写真を通して見ることができます。

発災から10年、これからに生かす教訓と復興

被災地域においても新型コロナウイルスの影響は無視できるものではなく、感染拡大防止のため、復興事業の内容変更や延期等が発生したばかりか、被災地域における中小企業の資金繰りや観光などの地域経済にも影響を及ぼしています。

これら影響に対して、復興庁では「新型コロナウイルス復興庁対策本部」の設置、復興庁のホームページ内に「新型コロナウイルス感染症関連情報」の掲載などによる影響の把握と情報発信の対応をとりつつ、復興事業の中止・延期にかかる費用の補助などで対応を取っています。

東日本大震災が与えた被害は甚大なものでしたが、その教訓を糧に、また力強く復興を遂げている被災地を見習って、新型コロナウイルスという未曽有の事態に見舞われている2021年の私たちも前に進んでいくときとしたいですね。

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