ホーム >  備える >  東日本大震災の教訓!津波避難タワーを学ぼう!

東日本大震災の教訓!津波避難タワーを学ぼう!

地震が発生した際、特に海から近い地域の方は、津波を警戒する必要があります。地震発生の際、沿岸部や川沿いにお住まいの方は高台へ速やかに避難すべき、という点については特に東日本大震災以降、一般的に広く認知されるようになりました。

では、沿岸部にいるものの高台までが遠く、津波が襲い掛かるまでに避難が間に合わない場合、どうすればいいでしょうか?

そんなとき、「津波避難タワー」「津波避難ビル」といった津波からの避難施設が役に立ちます。

東日本大震災の教訓を受けてその設置数が増え、また様々な工夫がこらされた、これら津波避難施設について解説いたします。

津波避難タワーとは?

津波避難タワー・津波避難ビルとは、津波による浸水が想定される地域において、地震発生時に住民が一時的、もしくは緊急に避難・退避するための人工施設を言います。

これらは内閣府により平成17年に作成された「津波避難ビル等に係るガイドライン」に沿って整備が進んでいました。さらに平成23年の東日本大震災の発生を受け「津波防災地域づくりに関する法律」により津波防災対策が制度化されたことで、改めて整理がなされ今日にいたります。

平成30年8月時点の内閣府の集計によると、津波避難施設は15,330棟、うち津波避難ビルが14,903棟、津波避難タワー427棟が設置されています。

これら津波避難施設は、海岸線を有する市区町村と、海岸線を有しないものの津波の遡上で被害が想定される市区町村、合わせて39都道府県、673市区町村に設置されています。

特に南海トラフ地震防災対策推進地域(南海トラフ地震により震度6弱以上が想定される、または高さ3m以上の津波が想定される海岸堤防が低い地域)の占める割合が大きく、津波避難ビル12,674棟、津波避難タワー356棟が該当地域の施設です。

東日本大震災から学んだ教訓を、南海トラフ地震という次なる脅威に備えるべく活用していると言えるでしょう。

津波避難施設の工夫

このように、津波被害が想定される地域を中心に設置が進んでいる津波避難施設ですが、その設備や運用には様々な工夫が見られます。そのいくつかをご紹介します。

施設における設備の工夫

・入口の自動解錠装置

津波避難時は、いかに早く、高く遠くへ逃げられるかがポイントになります。

そのため施設入口は緊急時にすぐ通過できる必要がありますが、平常時の治安等の観点からは常時開放することも難しい側面があります。集合住宅のベランダに見られるような、非常時に破壊可能な素材でできたドアでできている施設もありますが、子どもやお年寄りには破壊も簡単ではないかもしれません。

一部の津波避難タワーでは、震度5以上の揺れを感知すると自動解錠される鍵の保管ボックスを入口に設置したり、施設の扉自体に自動解錠機能を持たせ「震度5以上の揺れ」や、「緊急地震速報の発表」「大津波警報・津波警報の発表」などの定められた条件において速やかに施設を運用開始できるようにしています。

・避難後の継続利用のための備蓄

東日本大震災では、ビルの屋上へ避難した人たちが取り残され、日を跨いで救助を待つ様子もありました。

津波から高所へ避難した場合、地震による揺れが収まっても水がすぐには引かず、避難タワーで一定時間孤立することも考えられます。こうした考えにしたがい、非常食・水・トイレや毛布などの必要最低限の備蓄を施設内に整備した避難タワーもあります。

また、施設内にガス発電機を用意し、施設内での電源を確保しているケースもあります。

津波避難施設以外の役割を持たせる工夫

津波避難ビルに、非常時以外の用途を兼ね備えたり、別の用途の建築物を津波避難施設として兼用するケースも見られます。

こうすることで地域住民の認知が向上したり、設置費用を節約することが可能になります。

・歩道橋を兼ねた利用

歩道橋タイプの津波避難タワーは、平常時は横断歩道橋として利用され、非常時は津波避難施設として、相互に効用を兼ねるよう整備されています。

常時利用されている施設のため、緊急時にもそのまま避難スペースとして利用することが可能です。

静岡県吉田町の例では、歩道橋上部に収容人数1,200名程度を想定した避難スペースを儲けています。

・立体駐車場を津波避難ビルとして活用

民間の立体駐車場を津波避難ビルに指定しているケースもあります。

普段は立体駐車場ですが、国土交通省告示に基づく構造計算により鉄骨造の津波避難ビルとしての構造安全性を確認した建造物になっており、非常時には来場者や近隣住民、従業員等の避難施設とできるよう、屋上に避難場所を確保しています。

思わぬ落とし穴?津波避難タワー利用の注意点

こように、安全性・利便性の観点から各地に設置されている津波避難タワーですが、1つ注意点があります。

津波避難タワーは、その役割から、ある程度の高さのある建築物になり、近隣住民からは日頃から目立つ存在となります。そのため非常時には一目散に駆け込みたくなりますが、非常時に活用するためには普段から適切な利用を想定しておく必要があります。

目立つ津波避難施設が近隣にある場合でも、その避難施設が自宅よりも海岸寄りであったら、非常時の避難先として適切でしょうか?または、避難施設に向かう際に海岸線から平行に移動しないとならないとしたら、避難先として適切でしょうか?

残念ながら、折角の津波避難施設であっても、到着するまでに津波に飲まれてしまっては有効とは言えません。例えば自宅から最寄りの津波避難施設が海岸方向になってしまう場合、その施設には向かわずに海岸を背にして避難すべき場合も考えられます。

津波避難施設を活用するためには、津波ハザードマップ等で、普段から非常時の適切な避難先を確認しておく必要があると言えます。

適切な避難で、なんとしても津波から命を守る行動を!

津波避難は、早く、遠く、高くが大原則です。

まずは自宅と津波避難施設の位置をハザードマップで確認、適切な避難先を普段からご家族で話し合っておくことが大切です。

今回ご紹介したとおり、津波避難タワーや津波避難ビルには、東日本大震災という未曽有の災害を1つの悲劇として終わらせるのではなく、次なる脅威に備える教訓とするための工夫がこらされています。

災害時にこれらの津波避難施設を有効に活用し、命を守る行動がとれるよう、日ごろから備えたいですね。

人気記事ランキング

ホットワード

トップへ戻る